2. 一昨日からずっと誰かに話したかったんだ。やっと共感できる人に逢えたみたいね。

「一昨日からずっと誰かに話したかったんだ。やっと共感できる人に逢えたみたいね。」

隣に来て外を眺める女に太陽の光が右側から当たる。白いシーツが陽光に反射して、黒髪がキラキラと輝いて見える。ぼっとしてその光を眺めていると、また女が話しかけてくる声が聞こえた。

「どうしたの?みとれてる?」

俺は女から目を逸して、外のアスファルトに目をむけた。なぜそうしたのかわからない。ただ、正直に返事を返すのがなんだか恥ずかしい気がしたのだと思う。

しばらくの間、無言で外を眺めた後で、俺は黙って女にキスをした。女もそれを拒まず、長い時間唇が重なりあう。シーツは床に落ち、女の腕が俺の首に巻き付いていく。背中に回した手の平に女の背中がしっとりと吸いつく。ふれあった部分が、昨夜より暖かく感じた。

孤独の中にどれだけ漬かれば、これほど人を求めるのだろうか。何もかも投げ出した覚悟でやってきたのに、故国の言葉に魅かれてしまう。太陽が昇る方向にも気がつかなかった三年は、馴染めなかった故郷の生活から逃れたい一心でがんばってきた。けれどそれは、ただの逃げだったのだろうか。

「おかしな話ね。」

顔を離した女が、見上げて言う。

「なんで外国へ来たのに、おんなじ国の人に抱かれてるんだろう。」

質問なのか感想なのかわからないまま、黙って女の目を覗きこむ。

「あなたみたいな人、あっちにはいっぱいいるのにね。」

気分が混乱してくる。俺は女が何を言いたいのかわからなかった。

「やっぱりあれかな?ホームシックってやつ。」

無邪気に笑って言うと、女はベッドへと小走りに向かう。俺は混乱したままそこに立ち尽くしていた。頭では色々な考えが駆け回っていく。すこし怒りが混じり出すのを感じる。

 

「ね、私のスティ先いかない?こっちのパパとママに紹介するわ。」

ベッドの上で下着を身に着けながら女は言う。

「それか、あなたの家に行く?奥さんとかに紹介してよ。」

反射的に言葉が出た。

「俺は独身だ!」

 

女に腕を掴まれて外へと出る。真北に上がった太陽は容赦なく紫外線を降り注いでいた。からりとすがすがしい空気に包まれて、胸に汚れのない大気が流れ込んでくるのを感じる。なのに心は最悪な気分だ。これから先どうなるかまったくわからない。最悪なのに、なぜかそれでも良いやと、そんな気分が全身を心地好く覆っていく。

...不思議なものだ。